食前酒の力
内科病棟にいた頃、、
糖尿病で足が壊死し、
(細胞が死んでしまうこと)
その為、片足を切断した患者様がいました。
そして、
その傷が一向に改善しない。
入院期間も当初の予定と
大幅に遅れていました、、。
さらに、
患者様の食欲も減り、
口から食事がとれないことも増え、
点滴や栄養ドリンクのようなもので
補うように、、
完全な低栄養状態に入っていました。
そんな時、、、
病棟に新しい師長が来ました。
新しい師長がどんな人なのか、、
どんな仕事の仕方をする人なのか、、
スタッフみんなが注目する中で、
突然、、、
「食前酒を提供してみましょう」と提案してきたのです。
スタッフみんなが耳を疑い、
その場の空気が凍ったのを
よく覚えています。
ご家族から話を聞いて、、
お家にいる時は、
食事の前には必ずお気に入りの
食前酒を飲んでいたのだとか、、
病院でお酒を出すなんて!!
食前酒だからって、
糖尿病の人にお酒を飲ますなんて!!
賛否両論あり、、、
それでも、
やや強引に、、
師長は家族から
お気に入りの食前酒を
持ってきてもらいました。
そして、
その患者様が
その食前酒を飲んだ時、、
それまで、
反対派だったスタッフの気持ちを
一気に変えるほどの表情をしたのです。
本当に本当に美味しそうに、、
幸せそうな顔。
久しぶりの食前酒だったため、
患者様の顔はすぐに真っ赤になりましたが、
その赤い顔にスタッフみんなが
癒されました。
患者様は食前酒をきっかけに、
食事がすすむようになり、
足の傷もキレイに治っていきました。
さらに、
だれもが今後も車椅子での生活になるだろうと思っていたにもかかわらず、、
熱心にリハビリを行い、
杖を使って歩けるまで回復。
生活の質まで、
あげる事ができたのです。
食前酒をきっかけに、、
患者様が自分で
生きる力を取り戻したようでした。
最初で最後の
病院での食前酒の提供。
ダメなことはダメ、、、
確かにルールは必要ですが、、
しかし、
こんなルール違反なら
協力しようと思ってしまう、、、。
私はそんな大胆な師長が
面白くてとても好きでした。
その後も様々なことで、
スタッフを驚かせ
そして、
スタッフを振り回す師長。
当の本人は当時のことを
あまり覚えておらず、、
「私、そんな事したっけー?!?!
やだぁーー非常識!!」
と、、、。
爆笑します。
お茶目な人です。
宮本。